世紀末覇王のこと

私はしゃべるとわりと古い競馬の話も見てきたように語るタイプの人間で、ウマ娘のメイン層の90年代の競馬ってのも結構見てきたようにしゃべるのですが、明確にレースの記憶があるのって実はディープインパクトのあの辺りからだったりします。(それ以前となると、かなり強烈なもの以外はあんまり……)
とある麻雀漫画でメガネを外すと過去の対局の記憶が思い出せてってキャラがいますが、あれを真似してみると「ああ、このレース見たことあるかも……」ってなるのがあるくらいで、それ以前はリアルタイムでは見てなかったり。
そんな感じでも見てきたように詳細をしゃべれるのって、まあ昔のレースや馬のことをしゃべるのが好きな人がいてそれを聞いてたからだったりする、つまり受け売りなんです。

そんな受け売りの中に強烈に覚えているワードがいくつかありまして。
その一つ「あの馬は観客を敵に回した」。
ライスシャワーの話ではありません。
『世紀末覇王』テイエムオペラオー、あの有馬記念のことを聞いていたときのワードです。

オペラオーといえば年間無敗の2000年、ここが想起される馬でしょう。
この結果を残した馬にしてはとにかく人気に欠け、というかこの時代が競馬人気に欠けた時代であったこともあり、その責任を背負わされ敵視された馬でした。
この馬の不幸は、とにかくライバルのバリエーションの無さにありました。
一着オペラオー、二着ドトウ、たまにトップロード。
黄金世代と呼ばれたスペシャルウィークの98世代ととにかく対比され、「オペラオーのせいで競馬がつまらない」と嫌われたわけです。
こういう話を教えてくれる競馬のおっちゃんはまあわりと割りきった人で「面白味はないけど、単勝買ってりゃあ儲かるんだからなんの文句があるんだか。ライバルがいないんだから。」って人でしたが。


将棋差しに谷川浩司という棋士がいます。
ちょうど羽生善治を中心とした羽生世代の一世代前に若き天才と呼ばれ、「光速の寄せ」と評される鋭い終盤の寄せを持ち味とした名棋士です。
彼は同世代に彼と比肩できるライバルとなる存在がいませんでした。
谷川は名人在位4期の名棋士ですが、大山康晴中原誠羽生善治といった新旧の世代を代表する棋士に比べ非常に地味かつ評価されない存在です。

何が言いたいかといえばオペラオーというのは谷川浩司のような馬ですということ。
前の世代にオグリの平成3強、トウカイテイオー、新平成3強、黄金世代、後の世代にはアグネスデジタルアグネスタキオンジャングルポケットクロフネといった新世代に、“近代競馬の結晶”ディープインパクト

彼らは強く、同時に孤独であり、それ故に爽快さ面白さを求める人々を敵に回すことになりました。

ウマ娘では一目能天気お馬鹿、そういったキャラゆえに観客からは愛されている設定ですけどね。
でもちゃんとシナリオを読み解くと、孤独がにじむ良いシナリオになってますよ。

締められないんで投げまーす。